北海道の家賃がなぜ安いのか?最新相場と5つの理由

北海道の家賃が安い理由 賃貸

北海道は他の地域に比べて賃貸の家賃が安い傾向があります。本記事では、最新の北海道の家賃相場データ(ワンルーム〜1LDK)や、家賃が安い背景にある人口動向・空室率、さらに冬季の暖房費負担、小樽市の住環境(札幌市との比較)、家賃が安い物件・地域を選ぶ際の注意点などを詳しく解説します。

 

北海道の家賃相場(ワンルーム〜1LDK)【2025年最新】

まず、北海道全体および主要都市における賃貸家賃相場を見てみましょう(間取りはワンルーム〜1LDK程度の単身向け)。最新データによると、北海道の平均家賃は約5万円前後で推移しています。

 

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2015年から2024年にかけて北海道平均で48,350円から50,399円へと約4.2%上昇しました。これは全国平均の上昇率(約3.4%)よりわずかに高いものの、依然として北海道の家賃水準は全国平均よりも低め(都道府県別で第30位)です。

 

主要都市の家賃相場(いずれも月額の平均目安)

札幌市

北海道最大の都市で家賃相場も最高水準です。2023年時点で約56,700円 (※全間取り平均)とされています。札幌市内でも中心部の札幌市中央区は平均5.60万円と高く、郊外の手稲区や清田区では4万円台半ばまで下がります。

小樽市

札幌の隣に位置する港町です。最新データでは約48,600円(2024年)や46,397円(2023年7月)と算出されており、札幌より1万円近く安い水準です。ワンルーム平均は2.5万円台、1LDKでも4.1万円程度が相場です。

 

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旭川市

道北の中核都市で、約52,300円(2024年)とされています。札幌に次ぐ人口を持ちますが、家賃相場は札幌より低く、4万円台後半が中心です。

函館市

道南の港町で約51,600円(2024年)が平均です。観光地ですが人口規模は札幌より小さく、家賃水準も札幌より低めとなっています。

帯広市

十勝地方の主要都市で約48,900円(2024年)と算出されています。1LDKの相場は4.9万円前後で、地方都市としては平均的です。

(参考)最も家賃が安い地域

北海道内でも特に家賃が安いのは過疎地域です。例えば夕張郡栗山町は平均2.65万円と極めて低い水準です。これは全道で最安クラスの家賃相場で、地方の需要の少なさを反映しています。

 

以上のように、札幌市だけやや高めとはいえ、北海道の主要都市は軒並み家賃相場が5万円前後と首都圏などに比べ格安です。特に単身向け(ワンルーム〜1LDK)の賃料は東京23区の半額以下というケースも珍しくありません。

 

では、なぜここまで北海道の家賃が安いのか、その背景を見ていきましょう。

 

家賃が安い背景①:人口減少と高い空室率(需要減少)

北海道の家賃が安い最大の要因は、需要に対して供給が多い(=空室が多い)ことです。人口減少や都市部への一極集中により賃貸需要が伸び悩む一方、住宅ストックは増え続けているため、家賃が上がりにくい構造があります。

 

人口減少の影響

北海道全体の人口は1997年の約570万人をピークに減少局面に入り、2020年には約522.5万人とピーク時より約48万人も減少しました。2024年1月1日時点の北海道総人口は約509万人まで落ち込んでいます。特に地方都市や郡部で人口流出が著しく、例えば夕張市は人口6,411人と大幅な過疎化が進行しています。

 

一方、札幌市は道内で人口集中が進んでいたものの、近年は札幌市ですら人口が減少傾向に転じました(2024年1月1日現在の札幌市人口は前年同日比1,250人減の1,955,678人で4年連続減少)。住む人が減れば賃貸の需要も減るため、家賃の下落圧力が大きくなります。

 

住宅の供給過多

人口減にも関わらず、相続税対策や低金利を背景に賃貸アパートの建築は長年増加傾向でした。国土交通省の住宅着工統計によれば、全国で貸家着工戸数が増加し続けた時期もあり、アパート融資の拡大で供給が増えすぎた側面があります。

 

北海道でも新築アパート建設が進み、「人口が減っているのにアパートが増える」という状況が起きていました。この結果、需要と供給のミスマッチが生じ、入居者を獲得するために家賃を下げざるを得ない物件も多くなっています。

 

空き家率・空室率の上昇

上述の需要減と供給増により、北海道の住宅の空き家率は15.6%に達し過去最悪となりました(2023年、住宅総数に占める空き家の割合)。全国平均13.8%より高く、都道府県別で北海道が空き家率トップです。

 

道内の空き家は45万戸を超え、5年前から7万戸以上増加しています。賃貸用住宅に限ってみても、全国的に約22%が空室という試算がある中、北海道はそれ以上の空室率と推測されます。

 

例えば不動産情報サイトの調査では北海道は賃貸空き家率が都道府県中最も高い(全住宅のうち約8.96%が賃貸用の空き家)とのデータもあります。空室だらけではオーナーも家賃を上げられないため、結果的に低家賃物件が多くなるわけです。

 

以上のように、「借り手市場」となっている北海道では、物件間の競争で賃料が下がりやすいのです。札幌市中心部のように需要が比較的あるエリアでも、近年は新築供給の増加で空室率が上昇傾向との指摘があります。

 

賃貸経営者向けの情報でも「札幌は人口増でも供給過剰気味」とされており、これも家賃が安い一因と言えるでしょう。

 

家賃が安い背景②:冬季の暖房費負担(コスト面の理由)

北海道の家賃が安い理由(暖房費)

北海道の家賃が安く設定されがちなもう一つの理由は、冬の暖房費・光熱費の高さです。冬場の生活コストが高くなる分、家賃にあまりお金をかけられない、あるいは家賃を下げておかないと入居者が敬遠する、といった事情があります。実際、北海道は冬の光熱費が他地域より突出して高く、総務省「家計調査」からも以下のような数字が出ています。

 

光熱費は北海道が全国最高水準

総務省の調査(2021年度)によれば、1世帯あたりの光熱・水道費は北海道で年間277,087円と、関東の200,144円より約77,000円も多い結果でした。月平均にすると北海道は約23,000円、関東は約16,700円で、その差は歴然です。一年の3分の1が雪日とも言われる北海道では、暖房のため冬季の出費がどうしても増えてしまいます。

 

冬と夏の差

北海道では、冬の光熱費は夏より月あたり2〜3万円高くなります。例えば、夏場は1万円台だった家庭の光熱費が、真冬には4〜5万円に跳ね上がるケースも珍しくありません。「本州より月平均5,000円程度高い」という試算もあり、暖房期間が長い(10月〜4月の約半年)北海道ではトータルの負担が重くのしかかります。

 

暖房の燃料費

北海道の住宅の暖房は主に灯油(ストーブ・ボイラー)かガス、近年はエアコン(電気)も一部使われます。それぞれ費用感は異なりますが、灯油利用者が最も多いです。

 

調査では北海道では約8割が灯油暖房を利用しており、一戸建て住宅の平均灯油消費は年間約1,500リットルにもなります。そのうち8割は暖房用で、灯油1リットル131円換算(2025年2月時点)では年間約196,500円が灯油代に充てられる計算です。

 

冬だけで約20万円が灯油代に消える家庭も多く、原油高になればさらに負担増となります。

 

暖房費負担と家賃の関係

こうした状況から、不動産業者も「札幌は家賃が安い分、冬季5か月の暖房費に注意が必要」と指摘しています。入居者にとっては暖房費は実質的な“第2の家賃”とも言える負担であり、家賃が多少安くても冬の出費で帳消しになることもしばしばです。

 

そのため、貸主側も家賃設定に配慮せざるを得ず、結果として相場が抑えられる面があります。また物件によっては冬期(11〜4月)だけ暖房費(燃料代)を固定額徴収する「暖房費込み物件」もありますが、その場合も家賃自体は低めに設定されていることが多いです。

 

以上より、北海道の安い家賃には「光熱費の高さでバランスを取っている」面があることが分かります。実際、北海道移住者の声でも「家賃は安く抑えられるが光熱費が上がった」という体験談が多数あります。家賃と暖房費をトータルで考える必要があるのが、北海道で暮らす上での特徴です。

 

小樽市の住環境(札幌市との比較)

北海道内でも札幌市とその近郊では比較的生活の利便性が高いですが、それ以外の地域では都市規模による差があります。ここでは例として、小樽市の住環境を札幌市と比べてみましょう。小樽市は札幌市の隣接都市でありながら家賃が安めですが、その暮らしやすさはどうでしょうか。

 

都市規模と利便性

小樽市の人口は約10.65万人で、約195.7万人の札幌市と比べると1/18程度の中規模都市です。その分、札幌ほどの大都市機能(大型商業施設の数、多様な娯楽施設、大学病院級の医療機関など)はありません。

 

しかし日常生活に必要なスーパー・病院・学校などは一通り揃っており、普段の生活で極端に困ることはないでしょう。歴史ある港町で観光地でもあるため、街中には商店や飲食店も多くあります。

 

アクセスと通勤・通学

小樽は札幌までのアクセスが良好です。JR函館本線の快速電車で札幌駅まで約30〜40分、車でも高速利用で1時間弱と十分通勤圏内に入ります(小樽市から札幌市中心部まで車で約60分)。実際に札幌へ通勤・通学する人も多く、札幌のベッドタウン的な側面も持ちます。小樽市内にはJR線が市街地を横断して走りバス路線も発達していますが、坂の多い街なので場所によっては車があると便利です。

 

生活コスト

小樽の家賃相場は前述の通り札幌より低め(約4.6〜4.8万円)です。札幌の方が家賃は1万円以上高い場合もあります。一方で光熱費や食料品などの物価は両市で大差ありません。むしろ小樽は札幌より冬の寒さが厳しいわけではない(隣接して気候も近似)ため、暖房費も同程度と考えられます。

 

通勤する場合の交通費はかかりますが、札幌圏のJR定期代は会社支給の場合も多いです。総じて「札幌に勤め、小樽に住む」ことで家賃分がお得になるケースもあり得ます。

 

住環境の特色

小樽は歴史的建造物や美しい運河など景観に恵まれた港町で、街歩きが楽しい雰囲気です。観光都市であるため休日の楽しみも多く、海産物など食の魅力もあります。一方で坂道・階段が多い地形や冬の豪雪(札幌より雪が多い年も)には注意が必要です。

 

札幌は平坦で碁盤の目状の街並みですが、小樽は起伏のある街並みです。医療面では、小樽市内にも総合病院がありますが、高度な医療や専門診療が必要な場合は札幌の病院に行くことになります。ただ札幌まで電車で30分台ですので、受診のため札幌に出ることも現実的です。

 

教育・子育て

小樽市内には公立の小中高や、小樽商科大学などの高等教育機関もあります。札幌と比べ選択肢は少ないものの、日常の教育環境は確保されています。子育て支援策などは市によって異なりますが、小樽市もファミリー世帯の定住促進に取り組んでおり、大きく遜色はありません。とはいえ、専門学校や大学進学、就職の機会は札幌の方が圧倒的に多いため、将来的に札幌圏へ移る若者も多い傾向です。

 

まとめると、小樽は札幌ほどの便利さはない代わりに家賃の安さと落ち着いた暮らしやすさが魅力と言えます。実際、「札幌の喧騒を避けたいが利便性も捨てがたい」という人には、小樽のように札幌近郊で家賃が安い街は根強い人気があります。

 

近年はリモートワークの普及もあり、小樽に住んで札幌にはたまに行くというライフスタイルも選択肢になっています。

 

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家賃が安い物件・地域で注意したいポイント

家賃の安さは魅力ですが「安いなりの理由」が物件や地域ごとに存在します。最後に、北海道で家賃が安い物件や地域を選ぶ際に注意すべきポイントを整理します。特に寒冷地である北海道ならではの注意点もあるため、以下の事項をチェックしましょう 。

 

暖房設備の有無

暖房設備(ストーブやボイラー)が備わっていない物件は論外です。ごくまれに、本州のようにエアコンのみ(暖房は自前でヒーターを置く前提)の物件もありますが、北海道の冬に暖房無しは致命的です。必ず主要暖房が備わった物件を選びましょう。

 

あわせてエアコンの有無もチェックを。夏の冷房用だけでなく、エアコン暖房は春秋のちょっとした暖房や除湿にも役立ちます。最近は北海道でも夏に30℃を超える日が増えたため、エアコンなし物件は避けた方が快適です。

 

暖房燃料とランニングコスト

プロパンガス(オンリー)の物件は注意が必要です。プロパンガスは都市ガスより料金が高く、関東のガス代の約1.5倍になる傾向があります。寒冷地ではガス暖房・給湯の使用量も多くなるため、プロパンは家計を圧迫します。

 

オール電化も敬遠した方が良いでしょう。暖房をすべて電気(深夜電力の蓄熱暖房など)に頼ると電気代が非常に高額になるケースがあり、道内でも電気だけで暖房する家は光熱費がかさむ傾向と報告されています。

 

理想は都市ガス+灯油、またはLPガス+灯油の併用の物件で、経済性と暖かさのバランスが取れます。

 

立地と除雪状況

家賃が安い地域は郊外や坂の上など交通利便性が低い場所が多いです。冬場の除雪体制が悪い地域・道路だと、生活に支障を来します。物件周辺の除雪頻度や道路幅は不動産屋に確認しましょう。

 

特に安い一軒家などでは「道路が私道で除雪されない」「隣家が空き家で雪が来る」といったケースもあります。冬道の車通勤が必要になる場所は、ガソリン代や冬タイヤ代もかかる点も計算に入れてください。

 

階数と部屋位置

同じ物件でも1階や角部屋、下が駐車場になっている部屋は家賃が安めですが底冷えという寒さのリスクがあります。1階は地熱で底冷え、角部屋は外気に触れる面が多いため断熱上不利です。下が駐車場の部屋は底冷えが激しいです。「暖かさ重視なら2階以上・中部屋」が鉄則となります。

 

なお北海道では1階は雪で窓が埋もれる可能性があります。札幌でも大雪だと1階窓が開かなくなることがあり、FFストーブの排気筒の位置で雪埋まり部分を推測するといったテクニックもあるほどです。

 

安さに惹かれて1階を選ぶ場合は、雪対策が取られているか確認しましょう。

 

地域の利便性と安全性

家賃の安い地域は、駅から遠かったりバス便のみのエリア、あるいは夜間の人通りが少ない場所もあります。治安が極端に悪いエリアは北海道では少ないですが、繁華街周辺の古い雑居住宅などは避けた方が無難です。過疎化が進みすぎた町では日常の買い物や医療にも困る可能性があります。家賃だけでなくトータルの生活利便性を考えてエリア選びをしましょう。

 

以上のポイントを踏まえれば、安い家賃物件でも快適に暮らすことができます。北海道の不動産事情に詳しい専門家も「いくつかのポイントを押さえれば失敗しない」と助言しています。安い理由を見極め、賢く物件選びをすることが大切です。

 

まとめ

北海道の家賃が安いのは、人口減少による需要低下と住宅供給過多で競争が激しいこと、そして冬の暖房費など生活コストとのバランスが背景にあります。札幌圏を含め家賃相場は本州に比べ格段に低く抑えられていますが、その分別の費用がかかったり利便性に差が出たりもします。

 

小樽市のように札幌に近く家賃の安い街もうまく活用すれば、都会の便利さと低コストの両立も可能でしょう。物件を選ぶ際は北海道特有の注意点をチェックしつつ、家賃の安さを上手に享受して北の大地での暮らしを快適過ごしてください。