北海道内では、多くの市町村が「お試し移住」や「トライアルステイ」と呼ばれる移住体験制度を用意しています。いきなり移住する不安を解消し、地域の暮らしを事前に体験できる仕組みで、一定期間町の住宅に滞在したり、宿泊費補助を受けたりしてリアルな生活を試すことができます。本記事では、北海道内の主な自治体の制度を比較し、対象者や体験者の声、受け入れ態勢についても詳しく紹介します。
トライアルステイとは?
トライアルステイとは、一定期間地域に滞在し、移住後の生活を疑似体験できる制度です。トライアルステイは、お試し移住の一形態で、地域への短期滞在を通じて実際の生活を体験できます。観光とは異なり、地元の人々との交流や生活インフラの確認ができるため、移住判断の参考になります。
お試し移住とは?その定義と目的
お試し移住とは、本格的な移住の前に一時的に地域で生活する制度です。本格移住前に地域の空気感を知ることができ、ミスマッチを避けられる。
お試し移住の期間とタイプ【短期~長期まで】
お試し移住は数日から数ヶ月まであり、目的に応じて選べます。仕事や子育てなどライフスタイルに合わせて柔軟にプランを選べるためです。北海道東川町では1ヶ月滞在型の住宅を用意し、長期滞在者を対象としたサポートも充実しています。
どんな人におすすめ?お試し移住の対象者像
地方での生活に関心があるすべての人におすすめですが、特に以下のような方に最適です。
- テレワーク可能なフリーランス
- 子育て環境を重視する家族世帯
- 定年後のセカンドライフを考えている中高年層
お試し移住中の仕事は?収入面の不安を解消
リモートワークや地域おこし協力隊制度などで、働きながら移住体験が可能です。
- 地元農家の手伝いでアルバイト収入
- IT系フリーランスのワーケーション
- 自治体主催のインターン制度など
北海道内のお試し移住制度を提供する主な自治体
以下は2024~2025年時点でお試し移住制度を実施している北海道内の主な自治体と、その内容の比較表です。各自治体の滞在可能期間、費用(無料/有料)、補助金の有無、施設や条件、体験できる内容、想定ターゲットをまとめています。
北海道内のお試し移住制度を提供する主な自治体
自治体(制度名) | 滞在期間 | 費用・補助金 | 施設・条件(ペット可否等) | 体験できる内容 | 想定ターゲット(受入条件) |
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函館市(お試し移住補助金) | 市内宿泊施設に連続4泊5日以上 | 宿泊費補助:単身1泊5千円(上限3万円)、家族1泊5千円(上限10万円) | 自由に宿泊施設選択(ホテル・旅館等)条件:渡島・檜山管外在住、函館に親族なし | 町の暮らしを観光客目線ではなく体験(移住サポートセンター訪問必須) | 道外・道央など都市部からの移住希望者(アンケート・移住相談が条件) |
室蘭市(シーズンステイ) | 主に夏季(期間は相談に応じ柔軟) | 宿泊費自己負担(物件により月極等)※市が家具付き部屋を提供 | 家具・家電付き部屋を市が用意(市内ホテル・マンスリーなど選択肢あり) | 涼しい夏の室蘭で避暑生活体験受入あり | 長期休暇を利用したテレワーカーやシニア層(「夏だけ北海道」の二地域居住希望者) |
登別市(移住体験温泉マンション) | 1週間~1か月程度(応相談) | 有料:日額または月額料金(※温泉利用込み) | 温泉付き移住体験マンション(入居者は館内温泉入り放題) | 温泉三昧の暮らし体験地元住民との交流(温泉で顔なじみ) | 温泉好きなシニア層やリモートワーカー(夫婦や単身、高齢でも利用可) |
別海町(お試し移住住宅) | 2週間~1か月以内 | 移住情報 | 新得町の魅力 | 北海道 新得町 | 有料:月額5.7万~7.8万円程度(日割可、光熱費込) |
新得町(お試し暮らし住宅) | 2週間~1か月(31日)以内 | 移住情報 | 新得町の魅力 | ||
雄武町(お試し暮らし住宅) | 1週間以上~1か月以内 | 有料:6~9月 2,000円/日10~5月 2,500円/日(光熱費・通信費込) | 町営住宅2か所(一軒家+団地アパート)Wi-Fi完備、陶芸工房併設(有料利用可) | オホーツク海辺の暮らし体験(パークゴルフ無料、陶芸体験可) | 道北の自然や漁村生活に関心ある方(移住希望またはテレワーク希望の健康な方) |
壮瞥町(体験住宅「Järvi」) | 1週間~1か月程度(応相談) | 有料:日額または週額設定(光熱費込) | 平屋一戸建て住宅(湖の見える高台)※ペット不可、車推奨(坂の上) | 湖畔リゾートでの田舎暮らし体験(洞爺湖温泉街へ車5分、観光地巡り可 | 自然環境を重視するファミリー・シニア(洞爺湖の景観や静かな環境を好む層) |
砂川市(すながわお試し暮らし) | 1週間以上~2か月以内 | 有料:月額3万~5万円(物件で異なる、日割計算可) | 市有住宅3棟(一軒家×2、集合住宅×1) Wi-Fi対応(固定回線1棟あり)※単身70歳・家族全員75歳以下 | 地方中核都市圏の生活体験(病院や高速道アクセス良好な「住みやすい町」) | 道央圏への移住検討者(若者・子育て世帯中心)※完全移住~二拠点居住まで想定 |
名寄市(移住体験ツアー) | 5月~2月の好きな時期 | 参加費無料(現地集合) 宿泊費2泊まで助成(配偶者含む) | 体験ツアー形式(1~2泊コース)※役場と相談の上オーダーメイド日程 | 地域住民との交流、職探し同行等(家族には学校見学、求職者には企業訪問など) | Uターン・Iターン希望者全般(子育て世帯~若年層まで幅広く対応) |
※上記は主な事例です。現在の状況は各自治体に確認してください
最新情報は各自治体の公式サイトや北海道の移住情報ポータルで確認してください。
お試し移住の体験内容と地域の受け入れ態勢
お試し移住では、単なる観光では味わえない日常生活や交流体験ができるのが魅力です。例えば、別海町の移住体験では、町から発行される入居者証明書を提示することで源泉かけ流し温泉「ふるさと交流館」や町営プール、図書館を無料で利用できました。実際に夏に家族で2週間滞在した参加者は「毎日温泉に通い、図書館やプールも子どもと満喫できた」と語っています 。
自治体側も受け入れに力を入れており、役場職員が到着時に町内を案内してくれるケースや、地元住民との交流会に招いてくれる例もあります。新得町では入居時に町の概要説明を行い、移住体験者にはパークゴルフ場や温水プールの利用クーポンが配布されました。
想定ターゲットと利用条件
各自治体は「将来的に移住を検討している人」を基本ターゲットとしていますが、その中でも力を入れている層があります。例えば、子育て世帯には学校や子育て支援をアピールする企画を用意し、テレワーカーやリモート勤務者には高速通信環境や短期保育サービスで対応しています。
また最近は、移住希望者以外にも「お試し二拠点生活」やワーケーションを視野に入れた受け入れも増えています。例えば砂川市は完全移住だけでなく季節滞在(シーズンステイ)や二地域居住の試行も歓迎しており、雄武町もテレワーク目的の単身利用を解禁しました。このように利用目的に応じて対象を広げつつ、将来的な定住につなげる工夫を凝らしています。
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体験者の声と北海道でお試し移住するメリット
実際にお試し移住を経験した人々からは、「移住前に生活イメージを掴めて安心できた」という声が多く聞かれます。短期間でも暮らしてみると、気候や地域コミュニティとの相性、買い物・医療機関の利便性などが具体的に実感できます。
北海道でのお試し移住の大きなメリットは、雄大な自然環境の中で季節を問わず多彩な体験ができることです。夏は避暑地として快適に過ごせ、冬の厳しさも体験しておくことで本格移住の備えになります。また自治体によっては交通費助成や現地でのレンタカー補助などを行うところもあり(例:一部道内自治体のテレワーク体験補助、遠方からでも比較的参加しやすい制度が整いつつあります。
北海道全体の受け入れ姿勢
北海道庁や各地域の移住支援団体も、このようなお試し移住をバックアップしています。全道レベルでは「北海道移住のすゝめ」といったポータルサイトで各市町村の情報発信やイベント紹介を行い、移住希望者と自治体をマッチングする取り組みが活発です 。特に近年は北海道が移住希望地ランキング上位に位置する人気もあり、自治体間で特色ある体験プログラムを競い合うように充実させています。
例えば、西いぶり地域(室蘭市・登別市・伊達市・豊浦町・洞爺湖町・壮瞥町)は広域連携で移住情報サイトを作り、それぞれのお試し住宅の魅力を発信しています。温泉や景観など地域資源を生かした体験内容をアピールし、「少し住んでみよう」と興味を持った人を温かく迎える体制です。
こうした全道的な受け入れ姿勢により、実際にトライアルステイをきっかけに移住定住につながるケースも増加しています。道南の七飯町では、無料の住宅改修相談や子育て支援の充実も相まって移住者が年々増え、4年連続で人口増加を実現しました。背景には「七飯町移住体験プロジェクト」の成功があると報じられています。
トライアルステイとは?お試し移住で海と山に囲まれた町で暮らす方法【まとめ】
北海道でのお試し移住制度は、移住希望者にとって試しに暮らしてみる絶好のチャンスです。各自治体が工夫を凝らしたプログラムを用意しており、滞在中のサポートや受け入れ体制も充実しています。気になる地域があれば、まずはお問い合わせや申し込みをして実際に訪れてみましょう。短い体験から見えてくる北海道の魅力や課題は、今後の人生設計にきっと役立つはずです。移住への第一歩として、北海道のトライアルステイをぜひ活用してみてください。
以上、北海道のお試し移住制度について最新情報を交え詳しく解説しました。北海道への移住を検討中の方は、各自治体の公式サイトや移住相談窓口で詳細を確認のうえ、ぜひ現地での暮らしを体験してみてください。